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海事Q&A 商法(運送・海商)改正要綱⑨ 海上物品運送に関する特則は(Ⅲ)

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海事Q&A Q&A

海事に関するよくある質問

商法(運送・海商)改正要綱⑨ 海上物品運送に関する特則は(Ⅲ)
  1.  船荷証券
    1.  船荷証券の交付義務

       船荷証券については、外航では、ヘーグ・ルールズに沿って昭和32年に制定された国際海上物品運送法の規定が適用されていますが、内航については商法典に委ねられたままでした。現在、内航で船荷証券の発行はほとんどなされていませんが、規律が2種類に分かれることは相当ではありません。
       商法767条、768条は、船舶所有者、その代理人、又は船長は、荷送人又は傭船者の請求により、運送品の船積み後遅滞なく、1通又は数通の船荷証券を交付することを要す、としています。
       要綱では、国際海上物品運送法6条に符丁を合わせて、船積船荷証券と受取船荷証券を区分し、船舶所有者ではなく運送人を船積船荷証券及び受取船荷証券の交付の主体とすると共に、受取船荷証券が交付された場合、受取船荷証券の全部と引換えでなければ、船積船荷証券の交付を請求しえない、とされました。

    2.  船荷証券の作成

       船荷証券の記載事項は、商法769条と国際海上物品運送法7条1項では違いがありますが、後者の規律(船舶の国籍を除く)に合わせることとされました。

    3.  船荷証券の謄本の交付義務

       現行では、内航、外航共、傭船者又は荷送人は、船長等の請求により船荷証券の謄本に署名して交付することを要す、とされています(商法770条、国海運20条1項)。これは、証拠証券の役目も果しているためです。
       しかし、実際には、傭船者等は、運送人に事前にデータ送信する等により、船長等から船荷証券の謄本の交付請求がされることがないため、この規定は削除される見込みです。

    4.  船荷証券を発行する場合の荷送人の通告等

       国際海上物品運送法上の船荷証券については、運送品の種類、容積・重量又は個数及び記号について、以下の規律があります。

      1.  運送人又は船長は、荷送人の書面による通告があった場合には、原則としてその通告に従って船荷証券に記載しなければならない(当該通告が正確でないと信ずべき正当な理由があるとき等の例外あり)。
      2.  荷送人は運送人に対し、上記①の通告が正確であることを担保する。」

       ①は、運送人が、運送品に関する情報につき、船荷証券所持人に対する損害賠償責任を避けるために、無制限に船荷証券への記載を拒み又は不知文言を記載することを防止し、合わせて、荷送人との利益のバランスを図ったものとされています。
       ②は、記載誤りがあれば、運送人は文言証券性により船荷証券所持人に対し賠償責任を負うため、その際の荷送人への求償を確保しようとするものです。
       上記の規律が合理的であるため、商法にも取り入れるものとされました。
       なお、上記通告には、書面以外に、電磁的方法(電子メール、ファクシミリ等)も認められています。

    5.  船荷証券の文言証券性

       商法776条、572条により、船荷証券を作ったときは、運送に関する事項は運送人と所持人との間においては船荷証券の定める所に依る、とされています。
       これは国際海上物品運送法9条と同趣旨と解されていますので、同法に合わせ、要綱では、「運送人は、船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない。」、とされました。
       ところで、審議において、ドイツ商法523条では、不実記載による賠償責任の規律がされており、日本でも同様の規律が提案されましたが、仮にそのような事案が生じれば不法行為責任等で解決を図りうるということで、採用されませんでした。

    6.  船荷証券を数通発行した場合の取扱い

       商法773条(国海運10条)では、船荷証券が数通発行された場合に、複数の船荷証券所持人から運送品の引渡を請求されたときは、運送人は遅滞なく運送品を供託し、各所持人にその通知をすることを要す、とされています。
       この義務供託の趣旨は、引渡が遅れて損害を被る運送人を保護することです。
       しかし、保護のためには権利供託(民法494条後段)で事足りるので、要綱では、権利供託の規定にすることとされました。

    7.  複合運送証券

       商法が制定された時代は、コンテナ輸送も航空運送もありませんでした。しかし、現在では、海上運送、陸上運送、航空運送を組み合わせた複合運送が普通になっており、複合運送証券が発行されています。しかし、それを規正する法律の規定がありません。ただ、航空運送の引受を含む複合運送契約については、有価証券を発行する実例はありません。
       そこで、要綱では、以下の規律を設けることとされました。
       「運送人又は船長は、陸上運送及び海上運送を一の契約で引き受けたときは、荷送人の請求により、運送品の船積み後遅滞なく、船積みがあった旨を記載した複合運送証券の一通又は数通を交付しなければならない。運送品の船積み前においても、その受取後は、荷送人の請求により、受取があった旨を記載した複合運送証券の一通又は数通を交付しなければならない。荷証券に関する規定は、複合運送証券について準用する。」

  2.  海上運送状

     コンテナ船の登場による船舶輸送の高速化で、船舶が目的地に到着した時に船荷証券が間に合わず、貨物が引き取れないという事態が発生するようになりました(B/L Crisis)。
     このようなトラブルを避けて、運送品をスムーズに引き取るために登場したのが、サレンダードB/L (Surrendered B/L,元地回収船荷証券)及び海上運送状(Sea Waybill)です。
     サレンダードB/L では、B/L 発行後、船会社がB/L を全て回収し、Surrendered を記載、フォワーダーや船会社が揚地代理店にサレンダードB/L であることを連絡し、荷送人は荷受人にB/L のコピーをFAXして、オリジナルB/L なしで運送品が引き取られます。しかし、法的規正が及んでおらず、事故が発生した場合、船会社やフォワーダー等の責任問題が発生します。
     他方、海上運送状は、運送品の受取又は船積みがあったことや運送契約の内容を証明する機能を有しますが、有価証券ではないため、運送品の引取時に提示は必要なく、海上運送状に記載された荷受人であることが確認できれば引取ができ、回収も要しません。
     また、1990年に海上運送状に関するCMI統一規則が採択されて、諸外国でも規律が設けるところ(ドイツ商法526条、中国海商法80条等)が増えている他、ICCの信用状統一規則(UCP600)にも、「流通性のない海上運送状」として、船荷証券や航空運送状と共に、取扱に関する規定があります。
     以上から、近年、十分信用ある取引先との継続的な取引(グループ企業間等)で使用が増えています。
     そこで、要綱では、以下のとおりとされました。

    1.  運送人又は船長は、荷送人又は傭船者の請求により、運送品の船積み後遅滞なく、船積みがあった旨を記載した海上運送状を交付しなければならない。運送品の船積み前においても、その受取後は、荷送人又は傭船者の請求により、受取があった旨を記載した海上運送状を交付しなければならない。
    2.  海上運送状には、船荷証券の記載事項と同様の事項を記載しなければならない。
    3.  ①の運送人又は船長は、海上運送状の交付に代えて、荷送人又は傭船者の承諾を得て、海上運送状に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該運送人又は船長は、海上運送状を交付したものとみなす。
    4.  ①から③までの規定は、運送品について既に船荷証券が交付されているときは、適用しない。」

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