海事Q&A Q&A
海事に関するよくある質問
- 商法(運送・海商)改正要綱⑱ 国際海上物品運送法の一部改正等
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- 第1 国際海上物品運送法の一部改正
- 1 運送人の責任の限度額
国際海上物品運送法13条1項は、運送人の責任の限度額について、以下のとおり定めています。
「 運送品に関する運送人の責任は、一包又は一単位につき、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額を限度とする。
- 一 一計算単位の666・67倍の金額
- 二 滅失、損傷又は延着に係る運送品の総重量について1キログラムにつき一計算単位の2倍を乗じて得た金額」
これは、ヘーグ・ヴィスビー・ルールズ4条5項(a)を国内法化したものです。ここでは、「一包又は一単位につき」が、一の確定限度額と、二の重量制限度額の両方に係っています。
しかし、同項の該当部分の原文は、以下のとおりです。
「・・・neither the carrier nor the ship shall in any event be or become liable for any loss or damage to or in connection with the goods in an amount exceeding 666・67 units of account per package or unit or 2 units of account per kilogramme of gross weight of the goods lost or damaged, whichever is the higher. 」
条約では、「per package or unit」は、明らかにその前の「 666・67 units of accout 」にしか係っていません。
そのため、国際海上物品運送法は、その文言にかかわらず、同条約の内容で解釈されています。この点、外国では、同条約に沿った規定になっています(ドイツ商法504条1項1号、中国海商法56条1項、韓国商法797条1項、英国COGSA は同条約をそのまま採用)。
以上から、要綱では以下のとおり改正されました。「 運送品に関する運送人の責任は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額を限度とする。
- ⑴ 滅失等に係る運送品の包又は単位の数に1計算単位の666・67倍を乗じて得た金額
- ⑵ ⑴の運送品の総重量について1キログラムにつき1計算単位の2倍を乗じて得た金額」
- 2 高価品に関する特則
国際海上物品運送法20条2項は、商法578条の高価品に関する免責の特則の規定を準用しています。上記条約にはこの規定はなく、物品の価額等に関し任意に虚偽の通知をしたときの運送人の免責規定があるだけです(4条5項(h))。
同法の趣旨は、高価品は性質上滅失等による損害発生のリスクが非常に高く、予め明告されれば、運送賃を割増し、滅失等を防止する特別な配慮も可能だが、明告がない場合に多額の賠償責任を海上運送人が負うのは、酷であるためです。
中間試案では、この規定の存置の是非が議論になり、甲案は現行法を維持するものです。
理由としては、上記条約の締約国である英国でも高価品を免責する規律(1995年商船法186条1項(b))があり、また、普通品と高価品の運送は本質的に異なる類型であるとの指摘がされました。
これに対し乙案は、同法20条2項から商法578条を準用する旨の規律を削除するとするものです。
その理由として、責任限度額に関する規律が別途あり、運送人に高価品に関する免責の規律を併存させて二重に保護する必要はない、との意見が出されました。
審議の結果、特に規定案は出されておらず、現行法の規律が維持されると解されます。
- 1 運送人の責任の限度額
- 第2 その他
- 1 運送取扱営業
商法559条1項は、運送取扱人とは、自己の名をもって物品運送の取次ぎをすることを業とする者をいう、としています。
運送の取次ぎとは、荷主との間で運送取扱契約をした上で、運送人を選択し、荷主のために自己の名で、運送人と運送契約を締結することをいいます。自らが契約の権利義務の主体となりますが、その経済的な損益は荷主に帰属させます。
利用運送事業の拡大で、運送取扱営業のウェイトは相対的に低下していますが、利用実態は存在するため、現行法の規律は存置される予定です。要綱では、所要の規定を整備するとされていますが、特に具体的には挙げられてはいません。
審議では、利用運送事業者が荷主から運送賃を受領しながら、事後的に自身は運送取扱人であったと主張して運送人としての責任を免れようとする事例があり、これを封じるため、運送取扱契約で確定運送賃の額を定めた場合に、介入権(商法565条1項前段)の行使(自ら運送をすること)があったものとみなす旨の規定を設けるか否かが検討されました。擬制されれば、運送取扱人は運送人と同一の権利義務を有することになります(同項後段)。
この点、運送取扱人は、確定運送賃の額を定めた場合は、特に報酬を定めない限りは、運送取扱人は報酬を請求することができない、とされています(商法561条2項)。これは、確定運送賃と実際に掛かった運送賃との差額が、運送取扱人の実質上の報酬になると解されているためです。
そして、確定運送賃運送取扱契約については、これを介入権が行使された場合とみるか、それともこの場合の運送取扱契約が運送契約と考えるかどうかで、元々争いがあります。前者と解すれば、運送取扱契約上の義務も残る一方、運送人の義務も発生するということになります。
これについては、運送取扱人が自ら運送するものといえるかどうか(商法565条1項前段)は、別に報酬を支払う旨の合意の有無等、諸般の事情を考慮して判断すべきであって、確定運送賃の額を定めたということだけで介入権の行使を擬制するのは困難である、との指摘がありました。それで、上記の規定は、中間試案でも設けられませんでした。 - 2 倉庫営業
- ⑴ 倉庫営業(商法第二編第9章第2節)は、他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者です。
物品の運送をする運送営業とは異なりますが、前者が時間的障害を克服、後者が空間的・距離的障害を克服するもので、他人の営業での障害を克服する補助商という点では同様です。また、現在では、物品の保管及び運送を一元的に引き受ける物流サービス業が非常に多くなっており、運送営業とは濃い関連性があります。
ただ、運送営業に比べれば、滅失等の事故の可能性は低く、また、標準倉庫寄託約款(甲)38条でも、倉庫営業者は故意又は重大な過失による損害に限り責任を負い、その立証責任も寄託者側が負うとされていて、民法の原則に沿った商法617条の保管責任の規定からは、責任が相当に軽減されています。
以上から、今回の運送営業の見直しは、倉庫営業には当然には影響しないものとして検討がなされました。 - ⑵ 今回の改正作業では、現代、利用実態がなく、実効性を喪失した規律をそのままにすることは問題があるとされました。
倉庫営業について、具体的には、預証券及び質入証券に関する規定(複券主義)が現在、利用実態がないといわれ、この規律を削除して倉荷証券に関する規定(単券主義)に一本化することが検討されました。
要綱では、これについても、所要の規定を整備するものとされていますが、具体的な規定は挙げられてはいません。
- ⑴ 倉庫営業(商法第二編第9章第2節)は、他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者です。
- 1 運送取扱営業
- 第1 国際海上物品運送法の一部改正