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海事Q&A 共同海損とは

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海事Q&A Q&A

海事に関するよくある質問

共同海損とは

 共同海損とは、衝突、座礁、火災等、船舶及び貨物が共同の危険にさらされたときに、その危険から免れさせるために、船長が船舶または貨物に対して故意に異常な処分をしたことによって生じた損害や費用のことで、これらの損害等を利益を得た船舶、貨物等の利害関係人で公平に分担しようとする制度です。
 例えば、座礁した船舶の船脚を軽くするために貨物を投荷した上、曳船で曳き降ろして危険を免れた場合、投荷された貨物、及び曳船に対する救助報酬は、それぞれ共同海損としての損害、及び費用に当たります。
 この場合、投荷された貨物は、船舶及び貨物の全体を救うために犠牲になった訳であり、この貨物の荷主だけが損害を負担するのは公平ではありません。そのため、損害をこれによって救われた船舶、貨物、運賃の各利害関係人、及び共同海損で損害を被った者に分担させようとするものです。損害を被った者自身も分担義務を負担するのは、そうしないと損害を被った者のみが残存財産の利害関係人から全損害の賠償を受け、却って不公平になるからです(商法789条、YAR17条)。
 共同海損については、ヨーク・アントワープ規則(YAR)という国際的な普通取引約款があり、ほとんどの船荷証券約款、傭船契約書、船舶・貨物海上保険約款で取り入れられているため、現実には各国の海商法は補充的に適用されるだけです。
 この制度の沿革は古く、地中海東部のロードス島で紀元前900年頃に編纂されたロード海法には既に、船脚を軽くするための投荷による損害について、全ての利害関係人の分担金の支払義務が規定されていたと言われています。

※ ちなみに、フランス法でも、運送法L5133条で共同海損について規定されていますが、共同海損の分担義務については、船舶、積荷及び運賃だけで、共同海損で損害を被った者は入っていません(同法L5133-7条)。