海事Q&A 商法(運送・海商)改正要綱⑤ 定期傭船については

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海事Q&A Q&A

海事に関するよくある質問

商法(運送・海商)改正要綱⑤ 定期傭船については
  1.  定期傭船規定の新設

     一般に、定期傭船契約とは、船舶所有者等が船員を配乗した特定の船舶を、一定期間相手方に利用させる契約ですが、商法上、定期傭船契約に関する規定はありません。
     判例は、これを船舶賃貸借契約と労務供給契約との混合契約(大審院昭和3年6月28日判決)と解してきましたが、近時は、商法の適用については、法的性質論によらずに、具体的な契約内容の実質に則して判断すれば十分との意見も出ています。
     実務上は各種の標準契約書式が利用されており(内航海運は日本海運集会所の書式、外航海運はNew York Exchange 、 Baltime等)、また、外国でも定期傭船契約に関する規律を設ける例が増えています(ドイツ海商法557条、中国海商法129条等)。
     例えば、フランス運送法L5423-10条では、「船主は、定期傭船契約により、一定の期間、艤装された船舶を傭船者の利用に供する義務を負う。(Par le contrat d’affrètement à temps, le fréteur s’engage à mettre à la disposition de l’affréteur un navire armé, pour un temps défini.)」と規定されています。
     以上から、定期傭船に関する法的規律が求められていました(昭和10年法制審議会改正要綱でも明記)。他方、定期傭船には典型的なもの以外の形態もあり、立法化に消極的な意見も以前からありました。
     要綱では、定期傭船契約を、船舶の利用に関する契約の一つとして、各種標準書式の共通要素を前提に、船舶賃貸借(裸傭船)や運送契約とは異なる別の典型契約と位置づけ、新設することを提案しています。

  2.  規律内容
    1.  契約の要素

       要件は、「定期傭船契約は、当事者の一方が艤装した船舶に船員を乗り組ませて当該船舶を一定の期間相手方の利用に供することを約し、相手方がこれに対してその傭船料を支払うことを約することによって効力を生ずる。」とされました。
       船舶賃貸借や航海傭船との区別が意識されています。

    2.  定期傭船者の権限

       船長に対する権限として、「定期傭船者は、船長に対し、航路の決定その他の船舶の利用に関し必要な事項を指示することができる。ただし、発航前の検査その他の航海の安全に関する事項については、この限りでない。」とされました。
       これは、実務上、定期傭船者は商事事項(運送等の船舶の利用に関する事項)については船長に指示する権限を有し、他方、船長は航海の安全を確保する職務(海技事項)があり、定期傭船者の指示権はそこには及ばないことに基づくものです。

    3.  定期傭船者の費用負担

       定期傭船者は、船舶の燃料、水先料、入港料その他船舶の利用に関する通常の費用を負担する、とされました。
       実務上の一般的な費用分担を踏まえて規定されたもので、これ以外の船舶に関して支出すべき費用は、船舶所有者等が負担することになります。

    4.  物品運送に関する規定の準用

       定期傭船契約に係る船舶で実際に物品、旅客を運送する場合には、航海の安全確保のため、運送契約と同様に、①危険物に関する通知義務、②船長の違法船積品等の処分権、③堪航能力担保義務に関する規律、を準用することとされています。

  3.  定期傭船者の第三者に対する責任

     要綱では、定期傭船者の第三者に対する責任に関し、商法704条1項(船舶賃借人の第三者に対する権利義務)及び同法690条(船主責任)の規定が、準用されていません。
     この点からすれば、定期傭船者は、船長やその他の船員が職務上故意又は過失によって他人に損害を与えた場合に、賠償責任を負わないという解釈が容易になるとはいえます。
     但し、定期傭船契約という名目でも実態は様々であり、事案により、指揮監督関係の実質があれば、定期傭船者が衝突について賠償責任を負う余地はあります。

  4.  安全港担保義務

     定期傭船契約の標準書式では、定期傭船者に安全な港を指定する義務があるとされています。そして、一般に、ドライ・カーゴの書式では絶対的な義務、タンカーの書式(SHELLTIME 等)では相対的な義務(相当な注意を尽くすべき義務)とされています。
     審議では、寄港地は、定期傭船者がその都合で指定しており、商法に絶対的義務としての安全港担保義務に関する規律を設けるべきとの意見が出ました。
     これについては、定期傭船者が指定した港について、船舶所有者等もその安全性に関する情報の入手は可能である等との意見が出、結局、要綱では規定は設けられませんでした。
     ただ、標準書式ではほぼこの規定が設けられていますので、契約上の義務として履行することになります。

  5.  オフ・ハイヤー

     定期傭船の標準書式には、通常、オフ・ハイヤーに関する条項があり、外国法でも規定があるものがあります。例えばフランス法では、「船舶が24時間を超えて不稼働状態にあった場合、傭船料は、船舶が商業上利用できなかった期間については発生しない(傭船契約及び海上運送契約に関する法律のデクレ24条)」、とされています(他にドイツ海商法565条2項、中国海商法133条2項)。
     これについては、約定の詳細さから当事者間の契約に委ねることとされ、特に規定は設けられてはいません。

  6.  傭船料の消滅時効

     傭船料債権の消滅時効については、特に規定を設けず、5年(商法522条)として整理されています。
     これは、反復継続した大量の運送品を取り扱う運送関係の債権の1年の時効(同法765条)とは基礎が異なり、また、英国法では傭船料債権は6年の出訴期限(出訴期限法5条)であること等を考慮したものです(なお、フランス運送法L5423-4条では1年、中国海商法259条、韓国海商法846条ではいずれも2年)。

  7.  傭船料を被担保債権とする法定担保権

     傭船料を被担保債権とする留置権、先取特権については、特に規定は設けられていませんが、定期傭船者の所有物については商事留置権(商法521条)が成立する余地があるとされています。
     他方、定期傭船者の所有物以外の運送品については、傭船料と当該運送品との間に牽連性がなく(傭船料は個々の運送品の運送の対価ではない)、留置権の成立は困難と考えられています。

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