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労務Q&A Q&A

労務に関するよくある質問

労災補償と損害賠償の関係は

 労働災害の場合、労働者の損害の簡易迅速な回復を図るため、使用者に無過失責任を課す一方、補償額を定額化した、労災補償制度ができています。
 ここで、業務災害と認められるためには、業務遂行性(広い意味での仕事中)と業務起因性(仕事が原因)の2つの要件が必要です。
 しかし、労災補償がなされた場合も、それで損害が全て填補される訳ではありません。慰謝料は補償対象ではなく、休業補償や後遺症補償も全額ではありません。
 そこで、労働者は、別途、使用者の過失、過失と災害との因果関係、現実の損害を立証して、不足部分につき、民法上の損害賠償請求をすることができます(労災補償と損害賠償の併存)。

※ ちなみに、フランス法では、労働者が労災補償を受けられる場合、原則として民法上の損害賠償請求はできま せん(社会保障法L451-1条)。使用者の負担軽減のためです。これに対しては、労働者自身が労災の防止に努力するようにさせる点で評価する見解と、労 働者に不利益だと批判する見解があります。

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正社員の解雇は自由にできないのか

 民法上、期間の定めのない雇用契約は、一定期間前に予告しさえすれば、何らの理由なく自由に解雇ができるとされています。労働者の辞職の自由と同様に、使用者が継続的な契約関係である雇用関係に過度に拘束されないようにしているのです。
 しかし、解雇は、労働者の生活を直撃します。また、日本には終身雇用制という雇用システムがありました。
 そこで、判例は、労働者とこの雇用システムを守るため、「使用者の解雇権の行使が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として認めることができ ない場合は、権利の濫用として無効になる」という考え方を確立し、解雇を厳しく制限してきました。平成15年には、それが労働基準法にも明文化され、正社 員の解雇は実際上自由とはいえません。
 その解雇の有効性の判断に当たっては、他に解雇回避の手段がないか、軽微な違反に解雇という重い制裁を課していないか、不当な目的でなされていないか、労働者の側にくむべき事情はないか、等が考慮されます。

※ ちなみに、フランス法でも、解雇には、「真実かつ重大な事由」が必要です(労働法L122-14-3条)。それに対し、アメリカでは、一定の制約はありながらも、解雇の自由が比較的広く認められています。

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期間雇用契約の更新拒否(雇止め)は、自由にできるのか

 期間の定めのある雇用契約を締結している契約社員やパート社員は、民法上、雇用期間が終了すれば、契約が終了するのが原則です。
 しかし、何度も契約が更新された場合、労働者にとってその後も契約が更新するだろうと期待するのが自然です。
 そこで、判例は、期間雇用契約が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合や、雇用の継続を労働者が期待することに合理性がある場合は、雇止め(契約更新の拒否)するには、厳しい解雇制限を受けるとしています。
 その判断で考慮される事情は、業務内容が臨時的かどうか、更新の回数、雇用の通算期間、会社側に雇用継続の期待を持たせる言動があるかどうかなどです。

※ ちなみに、フランス法では、労働者の地位安定のため、期間雇用契約の締結自体、厳格に制限されています。病欠中の労働者の代替等、明らかに一時的な仕事の場合でないと、締結は認められません(労働法L122-1条、L122-1-1条)。

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非正社員と正社員の賃金格差は違法なのか

 賃金は、労働者と使用者の合意(契約自由の原則)で決められますから、仮に非正社員と正社員に賃金に格差があっても、違法の問題は本来生じないはずです。
 しかし現実には、職を求める労働者には、格差があってもその条件を飲むか飢えるかの選択肢しかありません。そのため、同一の業務で正社員と非正社員に賃金格差を設けること自体が違法かどうかが問題になります。
 これについては、同一(価値)労働同一賃金の原則を明言した法律の規定はありません。学説も救済肯定説と否定説に分かれています。
 この点、判例には、ほとんどフルタイムで正社員と同一業務に従事し、正社員に比べ低賃金で働いてきた女性臨時社員について、賃金額が同じ勤続年数の女性 正社員の8割以下となるときは、同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念に反し、公序良俗違反(民法第90条)として違法となる、と判 示したものがあります。その後、違法ではないとした判例も出ており、流動的です。

※ ちなみに、フランス法では、パートタイム労働者の報酬は、その企業で同じ格付けで同等の職務に就いているフルタイム労働者の報酬を基準に、労働時間等に比例した額が保障されており(労働法L212-4-5条3項)、同一価値労働同一賃金の原則が規定されています。

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セクハラがあった場合の法的責任は

 セクハラは、職場倫理に反する程度のものから、刑罰を科せられるものまで、程度は様々です。
 セクハラが常識的に限度を越えている場合は、加害者は、民法上損害賠償義務を負います。会社も職場環境に配慮する義務があるので、監督責任や義務違反で、賠償責任を負うことがあります。
 また、人事権を持つ上司が部下にセクハラをして、拒絶した部下を不当に解雇した場合、解雇は無効になります。
 さらに、セクハラのやり方によっては、強制猥褻罪、強要罪等の犯罪行為に当たることもあり、その場合刑事告訴が可能です。
 最後に、セクハラで鬱病になったような場合は、労災にもなりえます。

※ ちなみに、フランス法では、日本法とは違い、直接セクハラについて罰する規定があります(刑法222-33条)。職務上の権限を濫用して、性的目的で、命令や脅迫によって他人に対し嫌がらせをしたときは、1年の拘禁刑と1万5千ユーロの罰金が科せられます。

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