海事Q&A 商法(運送・海商)改正要綱⑫ 運送法全般の総則について

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海事に関するよくある質問

商法(運送・海商)改正要綱⑫ 運送法全般の総則について

 商法第二編(商行為)第8章(運送営業)の規定は陸上運送、第三編(海商)は海上運送がそれぞれ対象ですが、航空運送については規定がありません。明治の商法制定以後、社会・経済情勢の変化と共に法文と実務が乖離し、かなり以前から商法が運送全般につき有効適切に規律できる状態ではなくなっています。そこで、陸上運送、海上運送及び航空運送を区別した上、現在の実務に沿って改正されることとなりました。

  1.  運送人

     第8章冒頭の商法569条は、運送人とは、陸上又は湖川、港湾において物品又は旅客の運送をすることを業とするものをいう、としています。
     しかし、海上運送を規定した同法第三編(海商)の第3章(運送)では、「運送人」という用語はなく、また、航空運送については商法制定当時その業態自体存在せず、規定はありません。
     それで、要綱では、運送契約の当事者として重要な概念である運送人について、各運送形態を通じて、「運送人とは、陸上運送、海上運送、又は航空運送の引受けをすることを業とする者をいう。」、と定義されました。
     ここで、「運送の引受け」という文言により、利用運送業者(荷送人と運送契約を締結し、実運送業者に下請け運送を委託する者)も、「運送人」に含まれることが明確化されています。

  2.  陸上運送及び海上運送
    1.  陸上運送

       現行商法上、陸上運送とは、陸上又は湖川、港湾における運送を指すとされ、「湖川、港湾」は、平水区域によるとされています。
       その「平水区域」は、船舶安全法の概念であり、湖、川及び港内の水域並びに船舶安全法施行規則所定の水域を指し、地形等から気象・海象が平穏で、海岸まで近い区域が想定されています。
       これが陸上運送に含まれたのは、国土が狭い日本ではわざわざ、湖川、港湾のために特別法を制定するまでもないとされたためです。現行法を維持する案によれば、平水区域のみを航行する船舶は、堪航能力担保義務等の海上運送に特有の規律はないことになります。
       しかし、瀬戸内海のような広い海域も平水区域とされているところ、そこでの船舶による運送を陸上運送とすることは、社会通念上かなり無理があります。そのため、陸上運送は、文字通り陸上での運送のみを指すとすべきとする意見が出ました。現実にも、内航海運業法では、専ら湖、沼、河川において営む内航海運業に相当する事業についても、内航運送約款の届出義務等の規律が準用されています(同法27条)。
       審議の結果、「陸上運送とは、陸上における物品又は旅客の運送をいう。」、と定義されました。

    2.  海上運送

       現行商法では、海上運送は、商法684条所定の船舶(商行為をする目的で航海の用に供する船舶)による運送とされ、現行法を維持する案では、従前の陸上運送に該当するものは除かれます。
       これに対し、改正案は、前記のとおり、平水区域での運送も海上運送に含むとするものです。
       審議の結果、「海上運送とは、商法684条に規定する船舶による物品又は旅客の運送(湖、川、港湾その他の平水区域におけるこれに相当する運送を含む。)をいう。」、と定義されました。

  3.  航空運送

     商法制定当時にはなかった航空運送につき、国際運送については1999年モントリオール条約(国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約)があります。しかし、国内運送については、行政法的な航空法はありますが、私法に関する規定がなく、専ら運送人の約款に基づいて法律関係が処理されているのが現状です。
     もちろん運送約款は、国土交通大臣の認可を受けており(航空法106条)、公衆の正当な利益保護には配慮されてはいます。しかし、企業が一方的に決定するものであり、その内容の有効性は最終的には裁判所で確定するものであって、合理性がなければ公序良俗に反して無効となりえ、安定した解決基準足りえません。
     そこで、要綱では、商法に航空運送に関する規律を設けることとされました。
     そして、その航空運送の定義としては、航空運送事業を規律する航空法との整合性も考慮し、「航空運送とは、航空法第2条第1項に規定する航空機による物品又は旅客の運送をいう。」、とされました。
     同項にいう「航空機」とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう、とされています。

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