海事Q&A 2016年ヨーク・アントワープ規則

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海事Q&A Q&A

海事に関するよくある質問

2016年ヨーク・アントワープ規則
  1.  2016年ヨーク・アントワープ規則(以下「YAR2016」)が、2016年5月、万国海法会(Comité Maritime International 、「CMI」)で採択されました。改正点は多岐に亙りますが、主な点について見ていきたいと思います。
  2.  ヨーク・アントワープ規則について

     ヨーク・アントワープ規則(「YAR」)は、共同海損処理の統一のため、1860年のグラスゴー会議に始まり、1864年ヨーク規則を経て、1877年にベルギーのアントワープで作成されました。その後YARは、1990年リバプール会議で修正された後、CMIに引き継がれ、1924年、1950年、1974年、1994年の各規則を経て、2004年の規則(以下「YAR2004」)が最新でした。
     しかし、YAR2004は、共同海損の範囲を狭めていて、船主団体には受け入れられず、これまで、船荷証券、傭船契約書や保険証券では殆ど採用されていません。事実上、1994年YAR(以下「YAR1994」)が依然広く使用されている状況です。
     そのため、このYAR2016は、ICS(各国船主協会で組織する国際海運会議所)、BIMCO(ボルチック国際海運協議会)、IUMI(国際海上保険連合)等の海運関係団体の同意を得た上で作成されました。船荷証券等への採用される可能性はかなり高いといえます。
     YARは、条約ではなく、予め合意して契約等に含めた場合に適用される国際統一規則です。

  3.  YAR2016の改正点
    1.  救助報酬(Ⅵ条)

       YAR1994では、救助の性質を有する費用(Expenditure in the nature of salvage)は共同海損に認容されます。
       他方、YAR2004では、救助に対する支払(Salvage payment) は共同海損に認容されません。ただ、他の当事者が負担すべき救助料を支払った場合は、その当事者から回収すべき救助料を、共同海損清算書に貸方として記帳して請求できますが、共同海損として認容するものではありません。
       YAR2016では、救助の性質を有する費用は、契約に基づくと否とを問わず、共同海損に認容されることを原則としています。
       但し、被救助者が個別に契約上又は法律上救助者に支払義務を負う場合は、一定の要件を充足しないと共同海損に認容されません。その条件としては、救助報酬決定の際の被救助価額と共同海損分担の基礎になる価額の間に、重大な差が生じる後続の事故が発生した場合(別の海難で残存価格が減少すれば分担価額も減少します)や、重大な共同海損犠牲損害が生じている場合等が挙げられています。

    2.  避難港での乗組員の給料、食料費(XⅠ条)

       YAR1994では、避難港への離路期間、及び避難港での停泊期間の乗組員の給料、食料費が共同海損として認容されていましたが、YAR2004では、後者の停泊期間中の給料等は共同海損から除外されていました。
       YAR2016では、再び復活し、YAR1994と同様になっています。

    3.  仮修繕費(XⅣ条)

       航海を完遂するために事故による損傷の仮修繕をした場合の費用につき、YAR1994では、仮修繕をしなかった場合に生じたであろう共同海損費用の節約額を限度として、認容されていました。
       YAR2004では、更に認容される要件として、仮修繕費と本修繕費の合計額が、避難港で本修繕を行なえば要したであろう費用を超過する範囲に限定されるということが付加されました。
       YAR2016では、YAR2004で付加された要件が削除され、YAR1994と同様になりました。

    4.  分担価額(XⅦ条)

       積荷の価額が低いために、その積荷を共同海損の積算に含める場合に要する費用が分担額に対してアンバランスになると共同海損清算人が考えた場合、共同海損の分担から除外することができるとされました。コンテナ船の場合が想定されます。

    5.  立替手数料(XX条)

       YAR1994では、立替えられた共同海損費用につき、2%の手数料が共同海損として認容されていましたが、YAR2004では、その規定は削除されました。YAR2016でも、同様に共同海損として認容されません。

    6.  利息(XXⅠ条)

       YAR1994では、共同海損として認容された費用、犠牲損害について、年7%の固定利率の利息が認容されていました。
       YAR2004では、利率は毎年CMIの総会で決定するとされました。
       YAR2016では、固定にはせず、毎年の利率を、毎歴年の最初の銀行営業日の12か月物のICE LIBOR(ロンドン市場での銀行間平均貸出金利)に4%を加算するものとされました。

    7.  タイム・バー(XXⅢ条)

       共同海損分担金の請求権について、YAR1994にはタイム・バーの規定はありませんでした。
       他方、YAR2004では、準拠法に期間制限についての強行規定がある場合を除いて、分担金請求権は、共同海損精算書発行の日から1年以内に訴えを提起しなければ消滅し、航海終了日から6年経てば訴えの提起はできない、とされ、ただ、航海終了後に当事者の合意で延長できる、とされています。
       YAR2016では、YAR2004の規定が維持されました。

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