海事Q&A 海難残骸物の除去に関するナイロビ条約について

FJK法律事務所 トップ » 海事Q&A » 海難残骸物の除去に関するナイロビ条約について

海事Q&A Q&A

海事に関するよくある質問

海難残骸物の除去に関するナイロビ条約について
  1.  条約発効に至る経緯

     海上、特に、領海外で沈没した船骸等が除去されなければ、航行や海洋環境に危険を生じさせます。それで、その迅速且つ効果的な除去とその費用の補償の支払を確保(前文)するための条約が必要とされました。
     1995年にIMOで条約案が取り上げられ、審議が始まりましたが、条約の適用範囲を排他的経済水域に限定するか、締約国の選択によって領海及び内水にも適用を可能にする方式(Opt-in)にするか等が争点になり、審議は長引きました。
     そして、2007年5月18日、ようやくケニアのナイロビでのIMOの国際会議で、2007年海難残骸物の除去に関するナイロビ国際条約(以下「ナイロビ条約」)が採択されました。その後、2014年4月14日に、10か国めが批准して発効要件が満たされ(18条1項)、2015年4月15日発効しました。2016年8月2日時点の締約国は、以下の29か国になります。
     ナイジェリア、インド、イラン、パラオ、ブルガリア、英国、モロッコ、ドイツ、マレーシア、デンマーク、コンゴ、アルバニア、アンティグア・バーブーダ、バハマ、クック諸島、キプロス、フランス、ケニヤ、リベリア、マルタ、マーシャル諸島、オランダ、ニウエ、パナマ、セントキッツ・ネービス、南アフリカ、スイス、トンガ、ツバル(http://www.imo.org/en/About/Conventions/StatusOfConventions/Pages/Default.aspx)。

  2.  条約の主要な内容
    1.  目的及び一般原則(2条)

       締約国(State Party) には、条約の適用水域で危険(hazard)を生じている海難残骸物(wreck:船舶から流出した物も含む)について、除去(remove)する権限が与えられます(1項)。
       取るべき手段は、危険に比例し、海難残骸物除去のために合理的に必要な範囲内である必要があります(2、3項)。

    2.  適用範囲(3条)

       本条約は、条約の適用水域(Convention area) に存在する海難残骸物に適用されます(1項)。
       締約国は、本条約を領海を含む領域内にある海難残骸物にも、拡大適用することができます(2項前段、Opt-in)。その場合、IMO事務局長に通知します。
       これにより地理的適用範囲が拡大し、後述の強制保険を国内での除去にも適用できることになります。
       しかし、その場合、船骸撤去についての国内法とバッティングしますので、その調整のため、その国は、Opt-inしても、本条約による位置決定、標示及び除去以外の手段を用いる権利は残るものとされました(2項後段)。

    3.  影響を受ける国(Affected State:海難残骸物が自国の適用水域に存在する国 )が取るべき手順

       影響を受ける国は、海難残骸物の発生の報告を、海難関係者の船長又は運航者から受けると(5条)、当該残骸物が危険を生じるか否かを決定し(6条)、生じると決定したときは、当該残骸物の位置決定(7条)及び標示(8条)の手続きが取られるようにし、また、船舶の登録国と登録船主に通知します(9条1項)。
       登録船主(registered owner)は、危険を構成すると決定された海難残骸物を除去する義務があります(9条2項)。
       登録船主が海難残骸物を除去しないときは、影響を受ける国は、その海難残骸物を除去することができます(9条7項、代執行)。

    4.  所有者の責任(10条)

       登録船主は、上記の位置決定、標示及び除去の費用について責任を負います(1項)。
       ただ、登録船主が、1976年の海事債権責任制限条約の下での責任制限をする権利に影響を与えることはありません(2項)。

    5.  強制保険等(12条)

       総トン数300トン以上で、締約国の旗を掲げる船舶の登録船主は、制限条約による限度での、本条約による責任を担保するための保険その他の金銭上の保証措置を取る義務があります(1項)。
       1項の要件が満たされた場合は、その旨の証明書が船舶の登録国の権限ある当局によって発行されます。締約国に登録された船舶の証明書は、船舶登録国によって発行又は認証される必要がありますが、締約国に登録されていない船舶の証明書は、いずれかの締約国によって発行又は認証されたもので足ります(2項)。
       本条約に基づく費用の請求は、登録船主の責任について、上記の保険者に対して直接行うことができます(10項)。
       各締約国は、その国内法で、自国の領域内の港に入港若しくは出港し、又は、領海内の沖合の施設に到着し若しくは離れる船舶で、総トン数300トン以上のものにつき、登録の有無を問わず、第1項で要求される範囲の保険その他の保証措置が有効に存在することを確保する義務があります(12項)。

TOP