海事Q&A 船主の責任は制限できるのか

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船主の責任は制限できるのか

 商法上、船主は、船長その他の船員が運行ミス等で他人に損害を与えた場合、損害につき無限責任を負うのが原則です。しかも船主自身の責任は無過失責任です。
 しかし、海上企業は海上での危険にさらされ、また、航海中の船員の行為について船主がコントロールすることは困難である上、一旦ミスによる海難が発生した場合、損害が巨大になり、国の経済をも担っている海上企業の存立にも影響します。
 そのため、船主等は一定の場合、船主責任制限法により責任の制限を主張することができます。この制度の沿革は古く、中世の地中海の海事慣習法「コンソラート・デル・マーレ」にまで遡ります。責任を制限できる者は、具体的には、船主等、救助者及びそれらの者の被用者等です。
 責任の制限を受けるためには、船主等は、管轄の地方裁判所に責任制限開始手続きの申立をする必要があり、同法で定められた船舶のトン数を基準とした一定の限度額の範囲で債権者に配当されます。
 責任が制限される債権の代表的なものは、船舶上で船舶の運航に直接関連して生じる人身損害又は当該船舶以外の物の滅失・損傷による損害に基づく債権です。
 また、上記制限債権に該当しても、例外的に責任が制限されない債権もいくつかありますが、自船の旅客の人身損害に関する債権がその一つです。平成17年の改正前は、内航客船だけが責任制限ができないものとされていましたが、人命尊重の観点から、旅客の人身損害については、外航客船についても非制限債権とされました。

※ ちなみに、フランス法でも、船舶所有者の責任を制限する規定がありますが(運送法L5121条)、上記のような旅客の人身損害に関する債権は、非制限債権とはされていません(同法L5121-4条)。