海事Q&A 船舶先取特権とは

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海事に関するよくある質問

船舶先取特権とは

 債権者が多数で、債務者の財産が債権総額に満たない場合、各債権者は平等に扱われるのが原則です。
 しかし、例えば雇用契約によって生じた船員の給料債権が、強制執行等の場合に他の一般大口債権と平等に扱われるのでは、配当が僅かになって船員に酷です。
 そこで、商法は上記債権を船舶先取特権によって担保される債権とし、他の債権より優先して回収できるようにしています。船舶先取特権は、占有も公示も不要で、船舶抵当権にも優先します。船舶先取特権の目的物は船舶、属具及び未収運賃です。
 船舶先取特権の被担保債権には、他に、水先案内料・曳船料、航海途上での航海継続に必要な債権(修繕代等)、船舶の売買又は製造後未航海の場合の売買代金債権又は請負代金債権等があります。
 船舶先取特権に基づく担保権の実行には、先取特権の存在を証明する文書を提出すればよく、判決は不要です。競売申立前に、事前に裁判所で船舶国籍証書引渡命令を取得しておけば、寄港地ですぐに執行官が同証書を取り上げて船舶を抑留でき、寄港時間が短い場合の執行に便宜です。競売開始決定による差押え後、船主が債権総額の保証金を提供すれば船舶は解放され、以後保証金が執行対象になります。
 外国船の差押えの場合、船舶先取特権の範囲等は国によって異なるため、いずれの国の法律を適用するかが問題になります。争いはありますが、平成4年の東京地裁の判例では、先取特権の成立及び効力の双方共、法廷地法である日本法を準拠法としています。これなら外国法の調査が不要になり、迅速な執行が可能です。

※ ちなみに、フランス法では、上記の売買代金債権や請負代金債権は船舶先取特権の被担保債権として保護されてはいません(運送法L5114-8条)。他方、準拠法については、先取特権の効力は法廷地法によるが、その成否は契約締結地法によるとしているようです。